強皮症の受診時のコツ

受診

「先生に聞きたいことはたくさんあるのに、診察室では緊張してうまく話せない…」
「検査の説明を受けたけど、結局何が分かったのかイマイチ理解できていない気がする…」

このように感じている強皮症患者さんはきっと多いはずです。

「ほっと強皮症」では強皮症患者会Linkageの協力を得て、患者さんが日々の診察で抱える悩みや疑問を明らかにするため、アンケートを実施しました。その結果、多くの方が「今後の見通しがわからなかった」「受診で何を話せばいいかわからなかった」「病気の説明が不十分だった」といった悩みを抱えていることが分かりました。

これらの声を受け、強皮症患者会Linkageが主催するセミナーで、大阪大学 皮膚科教授の藤本先生と対談企画がおこなわれました。その内容も踏まえ、受診のヒントについてまとめました。

受診前の準備

診察時間を有効に使い、納得のいく診察にするためには、事前の準備が不可欠です。

不安なこと、聞きたいことをメモに書き出す
診察日が近づいてきたら、日々の生活で感じている不安や疑問をメモしておきましょう。「最近、指先のレイノー症状がひどくなった気がする」「関節の痛みが強くなっている時間帯はいつだろう?」些細なことでも構いません。メモがあることで、診察時に「あれも聞きたかったのに…」と後悔するのを防げます。
またレイノー症状についてはスマートフォンのカメラで撮影して、受診の際に医師に見てもらうと正しく症状を伝えることができます。

質問は具体的に
「なんとなく不安です」と伝えるよりも、「〇〇の症状について、今後どのように変化していく可能性があるのか教えてください」のように、具体的に質問内容を整理しておきましょう。具体的な質問は、医師も答えやすく、より深い情報が得られます。

特に聞きたいことを3つに絞る
限られた診察時間を有効に使うために、特に重要だと感じる質問を3つ程度に絞っておきましょう。「今日はこの3つを聞いて帰ろう!」と意識することで、時間配分を考えながら診察に臨めます。
もちろん診察の込み具合などで3つ全て聞けないこともあれば、逆に4つ目以降の質問にも回答いただけることもあり、医師の状況に合わせることも大切です。

過去の受診からの変化や気になった出来事を記録
前回の診察からの体調の変化や、日常生活で気になった出来事をメモしておきましょう。「先月から咳が出始めた」「〇〇をした後に息苦しくなる」など、具体的な状況を伝えることで、医師は病状の変化を把握しやすくなります。

診察室での医師とのコミュニケーション

医師とのコミュニケーションは、治療を進めていく上で非常に重要です。ちょっとした工夫で、医師との距離がぐっと縮まるかもしれません。

分からないことは「分からない」と伝える勇気
検査結果や治療方針について、理解できない部分があれば遠慮せずに「すみません、〇〇の部分がよく分からないのですが、もう少し詳しく教えていただけますか?」と質問しましょう。分からないままにせず、積極的に質問することが大切です。

メモを見せながら質問するのも効果的
事前に準備したメモを診察中に見せながら質問することで、医師に的確に情報を伝えられます。また、聞き漏らしを防ぐ効果も期待できます。

医師との上手なコミュニケーション
自分の要望や不安を伝える際は、頭ごなしに否定するのではなく、「〇〇の症状が辛いのですが、何か良い対処法はありますか?」のように、医師に相談するような形で話してみましょう。医師も人間です。味方になってもらおうという姿勢は、より良いコミュニケーションにつながります。

検査をしてほしい時は具体的に理由を伝える
希望する検査がある場合は、「〇〇の症状が気になっているので、念のため〇〇の検査もお願いできますでしょうか?」のように、具体的な理由を添えて伝えましょう。

症状の伝え方には「メリハリ」が大切
たくさんの不安を抱えているかもしれませんが、診察で伝える際には優先順位をつけましょう。「今日は特に〇〇の症状について相談したい」と伝えることで、医師も重点的に話を聞いてくれます。

良くなっていることも伝える
辛い症状ばかりでなく、「〇〇をすると楽になる」「〇〇という薬は効果がある」といったポジティブな情報も伝えるようにしましょう。

痛みを具体的に表現する
痛みを伝える際は、「ズキズキする」「チクチクする」など、具体的な表現を用いるようにしましょう。また、「痛む場所」「痛みの強さ(10段階評価など)」も伝えることで、医師はより正確に状態を把握できます。

検査って何のため?

検査を受ける際、「この検査は何を調べているんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
ここでは、強皮症の診療でよく行われる主な検査について簡単に解説します。

  • 血液検査
    強皮症の診断や病状の把握、治療の効果判定、副作用のチェックなど、様々な目的で行われます。KL-6やBNPといった特定の項目は、強皮症の病態把握に役立ちます。
  • 肺CT検査
    肺の状態を詳細に確認するために行われます。強皮症に伴う間質性肺炎などの肺病変の早期発見に役立ちます。
  • 心エコー検査
    心臓の動きや弁の状態、肺高血圧の有無などを確認するために行われます。強皮症の患者さんにとって、重要な検査の一つです。
  • 呼吸機能検査
    肺活量や呼吸能力などを測定し、肺の状態を評価するために行われます。間質性肺炎の進行度合いなどを把握するために重要です。

治療について

検査結果に基づいて治療方針が決定されます。最近は強皮症の治療の選択肢が増えてきており、医師から希望を聞かれることもあります。

治療について希望があれば伝える
治療法には、免疫抑制薬、分子標的薬など、いくつかの選択肢があります。
それぞれの薬のメリット・デメリットについて医師から説明を受け、自身の希望があれば伝えていくことも大切です。

分からないことについて
「この薬の副作用はありますか?」「日常生活で気をつけることはありますか?」など、気になることがあれば医師に質問するか、時間が無さそうであれば薬をもらうタイミングで薬剤師に聞いてみましょう。

日常生活での注意点

強皮症と診断されても、諦める必要はありません。適切な治療と日々のセルフケアで、症状をコントロールしながら自分らしい生活を送ることができます。

体調の変化を記録する
日々の体調の変化を記録しておくと、診察時に医師に伝えやすくなります。症状の変化だけでなく、食事や睡眠、運動など、生活習慣についても記録しておくと良いでしょう。

困った時は相談できる場所を持つ
強皮症の患者会やオンラインコミュニティなど、同じ病気を持つ仲間と交流できる場所を見つけてみましょう。情報交換や悩み相談を通じて、孤独感を和らげることができます。

他の医療機関との連携の際は

強皮症の治療以外で他の病院を受診する際は、必ず強皮症であること、現在受けている治療内容、主治医の名前などを伝えましょう。お薬手帳を見せるのも有効です。

逆に、他の病院で受けた検査結果や治療内容を強皮症の主治医に伝えることも大切です。連携を密にすることで、より適切な医療を受けることができます。

おわりに

強皮症は、患者さん一人ひとりの病状や悩みが異なる複雑な病気です。だからこそ、医師としっかりとコミュニケーションを取り、納得のいく治療を進めていくことが大切になります。

また受診の経験についてコミュニティでも頻繁に話し合われております。
同じ病気の患者さんの体験も是非参考にしてみてください。